2020.07.11. ACIDMAN 「灰色の街」リリース記念 プレミアムワンマンライブ “THE STREAM”(配信ライブ)

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ACIDMANがめっちゃ好き

改めて文字にするけれど、音楽が好きだ。
特にライブやフェスの会場に足を運んで、生でパフォーマンスを観て、肌で空気を感じるのが好きだ。そこが自分の居場所で、帰りたい、とすら思う。
けれど今のこのご時世、当然それはオーディエンスである自分にとっても、アーティストにとっても叶わぬ望みになってしまっている。
キャパシティを大幅に減らしたり、座席の間隔を広めにとったりすることで少しずつ開催を試みる動きも出てきたけれど、まだまだ元通りに、というには先が見えない。そんな状況なので、近頃は配信型のライブが多い。

というわけで本日、特に好きなバンドの一つであるACIDMANがライブ配信をするとのことだったので、視聴券を購入してリアルタイムで鑑賞した。
本当だったら今月開催予定だった「灰色の街」リリースツアー。
ファイナルは彼らの地元である埼玉公演。私も現地まで行く予定だった。
行けなくなってしまったのは本当に残念だったけれど、こうしてライブを配信してくれることには感謝しかないし、ACIDMANならきっと素晴らしい物を届けてくれるとかなり期待を込めていた。

ACIDMANは3月にもライブ配信をしていたけれど、視聴券を販売する形での配信は恐らく初めて。
ちなみに今回の配信はチケットプレイガイドでお馴染みのイープラスが提供する“streaming+”での配信。イープラスのアカウントをすでに持っていたので、新規で利用登録をしたりアプリをダウンロードする必要もなく、ブラウザで視聴できたので開演30分前に視聴券を購入してもスムーズに見る事ができた。

視聴環境などの確認もあったので20分ほど前から配信URLへアクセス。
チャット機能などもあったのとTwitterのタイムラインも賑わっていたので、思っていた以上に普段のライブの開演前の空気に近いものがあっていい意味でちょっとそわそわしてしまった。
開始時刻の19時に画面が切り替わり、思わずうおお…と声が出る。
さらに数分後、また画面が切り替わって「灰色の街」のMVからスタート。

MVが終わると間髪入れずに映像が一変し、いよいよライブ本編が開始。

あまりにもまさかすぎるworld symphony始まり。普段アンコールでやるような曲なのでいきなり興奮してしまう。そしてのっけからACIDMANのライブの強みであり、魅力である映像がふんだんに使用されている。大地が迫り上がってくるような揺らめき方が本当に風のようで圧巻される。

勢いのままに2曲目はストロマトライト。目の前のオーディエンスが見えているかのようにハンドクラップを煽るBa.サトマに嬉しさが止まらない。ちゃっかり開けて飲んでいるビールも止まらない。
心なしか音の粒が鮮明な気がする。ギターのフレーズに粒子感があって、こういう違いがはっきりとわかるのは配信だからこそなのかな、なんて考えたりした。

曲が終わった直後に拍手の音が小さく入ってきた。当然会場入りしているスタッフも限られたごく少数しかいないので、ふと寂しくなる。この興奮が直に伝わればいいのに、と、思わずにはいられなかった。

けれど感傷に浸っている間もなく、Dr.のイチゴ(いっちゃん)が叩き出した音に思わず口角が上がる。to live。ここまでの頭からの3曲の攻め具合、いい意味でどうかしている。ここで歌詞が字幕表示されたのがとても格好良かった。字幕と映像とタイミングが少しずれた時があったけれど、立て直しが早かった。

「画面越しの皆様、こんばんは、ACIDMANです。
楽しんでもらえてますか?」

緊張してるのが伝わってくる。楽しんでるよ、伝わってるよ。

初披露のRebirth。アニメ「あひるの空」の新オープニングテーマ曲として先日発表・解禁されたばかりで、今日聴けるかなととても楽しみにしていた。

夏の湿度と共存しているけれど爽やかで、初夏の今の時期にちょうどいい曲。

CD化はおろか配信も開始されていないため、TVサイズのショートバージョンしか聴けていなかったのでまさかのラスサビでの転調に驚かされる。作曲が先だったのか、タイアップが決まるのが先だったのかわからないけれど、後者だったとしたら高校生が主人公のスポーツアニメの主題歌ということで弾むような若さを意識して盛り込んだのか。珍しい!でも、すごくいい。画面の前で思わず破顔する。

続くのも今の時期に合うスロウレイン。大サビのところで思わずいくぞーーー!!と叫びたくなる。リズムに合わせて身体が動いてしまう。好きだな、という感情が溢れる。まるで恋みたいだな、なんて思う。

赤橙、ALMAと代表曲のターン。個人的にはここにFREE STARある証明を加えて四天王感。

「遠き日の魔法をかけてみる」
「幼さ故の過ちなど これで消える」

ACIDMAN「赤橙」

という歌詞のせいか、赤橙はいつ聴いても郷愁と夕暮れ時のようなセンチメンタルを感じる。

みなさん楽しんでますでしょうか!

頬(口角)をぐっ、とさせて、拳もぐっと握り込んでみせる社長。なかなか見れない表情の気がする。
毎年恒例の3.11以来、4か月ぶりのライブ。いいよ、気持ちいいよ、といっちゃん。本日のメンバーの衣装は社長のスタイリングとのこと。

もう何十回とライブに足を運んできた中で恒例になっている一幕だけれど、ALMAのきっかけになった電波望遠鏡のことについて話し始めると社長の目は少年のようにキラキラと輝き出す。この人はライブ中にわかりやすく笑顔になるわけではないのだけれど、いつも代わりに目で雄弁に楽しさを語ってくれる
いつ見ても聞いてもこの曲への想いの強さは伝わってくるし、演奏を観る度にスケールアップしているのを感じる。
駆使しているプロジェクターの力を発揮するのにうってつけなALMAの空の映像も何度も見てきたけど、この星が降ってくるような空を見にウユニ塩湖に行ってみたい、と思った。

僕らが大事にしているインストゥルメンタルだけのワンマンをやりたい。
インストだけなら声も出さずにできるし、飛沫も飛ばないし、ソーシャルディスタンスもできるんじゃないか

そんなMCを挟んでからは聴かせる曲の時間で、Slow View、Spaced Out水の夜に、の3曲を続けて披露。
インストの中でもSlow Viewは結構好きで、一時期SNSのアカウントのIDで使っていたくらい。幾何学的な映像の効果がまた絶妙に空気を盛り上げる。

それにしてもカメラワークと映像の調和が凄まじく良い。配信ということで、良い画角、じっくり観ることができることをかなり意識して映像の駆使ありきのセットリストを組んでくれたんだろうな、と言うことをSpaced Outが織りなす色気に当てられながら考えた。 
演奏機会になかなか恵まれていなかった水の夜にの映像展開も、このままPVにしてもいいのではと思うくらいあまりにも綺麗で良すぎる流れだった。
伝わったかな、とチャットでの反応を気にしていたけど、心配しないで信じてほしい。

月並みな言葉だけれど、
「明けていく夜空を信じたなら、世界は歌になっていく」。
どんなに心が灰色になっても、悲しみに塗れても、
想像すれば必ず変わっていく。きっと大丈夫だ。

真摯に語りかけるように口にされた歌詞の一節がすっと胸に染みた。
CDの特典に花の種をつけて、グッズで植木鉢も売るなんていやらしい社長…なんて軽口を飛ばしつつ、今回の公演タイトルに掲げられた「灰色の街」

昨年の10月末に灰色の街を初めて聴いた時にTwitterで呟いたのだけれど、今も変わらず、本当にこの曲は透明度が高くて清々しい。
映像が灰色になって、花が開くようにだんだんと色づいていくのが雨に洗い流されて、浄化されるようだった。

余談。この曲の次にシングルとして発表されたのがRebirthなのだけれど、歌詞に”灰色の街”という言葉が入っている。歌詞がリンクしている気がするのでリリース後にCDを買って歌詞カードを読み込むのがとても楽しみ。

ここからはラストスパートに向けて駆け抜けていく。

何も残らないって 神様は言ったんだ 僕らの足跡なんて小さすぎて

ACIDMAN「灰色の街」

と歌う灰色の街から、

失うことに慣れても 生きていくんだよ

ACIDMAN「MEMORIES」

と諭すMEMORIES。
今このときに歌われる意味を噛み締めるように、向き合うように奏でられる。

サトマがカメラに狙いを定めて視聴者を煽る。
いつもの曲やるから、と彼らは言う。確かにほぼ毎回演奏してくれる代名詞の曲。けれどそのいつもが、今はこんなにも近くて遠い。それでも今日、画面越しでもこの時間を、この瞬間を求め合っているという、証明を、求めずにはいられない。

雨曝しの水芭蕉が 伝えていたのは 一つの証明
憂うだろうが歪むだろうが その花は 確かに 此処に在った

ACIDMAN「ある証明」

一つの証明、で最早堪える気もなく天を指す。確かに此処に在った、で胸を叩く大木伸夫に気持ちが溢れる。自分の内側にあるものが熱くなるのがわかる。家だろうと関係ない。腕を突き上げて、画面の前で叫んだ。
これだけ書いておいて具体的な理由を言葉にできないのがもどかしくて仕方ないのだけれど、本当にこの曲は私自身にとっても特別なのだ。
とある日のライブでの全身の感覚全てが持っていかれるような、何もかもが攫われるほど魅せられてしまった強烈な体験の記憶が身体に刻み込まれていて、その感覚が忘れられない。思い出していまだに震えるほどに。

楽しかった、どう?(滅茶苦茶楽しい。あっという間、といっちゃん)
貴重な体験をさせてもらって感謝している。
いつものライブが、日常が、どれだけ贅沢だったのかを改めて感じる。
日常はすぐ戻ってくるかもしれないし、戻ってこないかもしれない、それでも前を向いていきたい。

こちらこそです、ありがとうと何度心の中で伝えても叫んでも足りない。
この人たちの前を向いていく言葉にどれだけ影響されているだろう。
誰よりも死や世界の終わりを静かに見つめて考えて歌にしてきた彼らだからこそ、嘘のない言葉だと信じて着いていきたくなる。

ACIDMANといえば映像、映像といえばこの曲を演りたいからやる、と口にして演奏が始まる。廻る、巡る、その核へ。
(Twitterのフォロワーさんによるとなんと5年ぶりに披露されたとのこと…)

初めて聴いたわけではないのに、食い入るようにじっと見入ってしまった。
世の中の状況や時節柄でも、巡り合いを意識せずにはいられないからか。

「廻る 与え 許す日を
 願う ただ 悠々と」
「生まれ変わりの中で 手にした一つの音を 鮮やかに思い出す
目を閉じて 次に出会う日はまた 踊りの輪を描いて 未来を願うのだろう」

ACIDMAN「廻る、巡る、その核へ」

私がこの曲を初めて聴いたのは10年ほど前に初めて行ったワンマン公演。まだ10代の頃だったのでなんか重たくてスケールの大きい曲だな、程度の大変未熟な感想しか抱けなかったのだけれど、多少歳を重ねた今、改めてこの曲がどれだけACIDMANの持つエネルギーを込めて鳴らされているものなのか、どれだけ壮大な世界を描いているのか。あの頃よりは少しだけ、わかるようになった気がした。

そして、
この曲が披露され、アンコールもないと告げられれば
生きることや現状に対して拭えない重さや悲観では絶対に終わらないのが彼らなので、ラストを飾るのは「Your Song」だという確信があった。
わかっていたけれど、それでも実際にあのイントロが鳴るのはやっぱりどうしようもなく嬉しかった。

「祈ろう 互いの運命を讃えよう 私たちは先に行かなければならない
 祈ろう 互いの戦いを認めよう 貴方の呼びかけが糧となる」
(翻訳)

ACIDMAN「Your Song」

また本当のリアルライブができる日を信じて願う、今に必要な歌詞の日本語訳が字幕で表示される。メンバーの後ろのスクリーンに今までのライブで撮影された写真が次々に映し出される。涙腺にダイレクトに響いた。

「そして、私はここに立つ。」
「あなたは大丈夫」

ACIDMAN「Your Song」

大満足でした。

セットリスト

01.world symphony
02.ストロマトライト
03.to live
04.Rebirth(新曲)
05.スロウレイン
06.赤橙
07.ALMA
08.Slow View
09.spaced out
10.水の夜に
11.灰色の街
12.MEMORIES
13.ある証明
14.(cps)→廻る、巡る、その核へ
15.Your Song

at 渋谷ストリームホール

本編終了後は滅多にやらないメンバー紹介とスタッフへの感謝の言葉を述べた後、Rebirth音源配信日決定、初公開の告知。
どうぞ!の掛け声とともに映像が巻き戻り出す。鳥肌が立った。
スペルを変えると「Reverse」で巻き戻る、ということを演奏の時にも言っていたけれどこの演出の伏線だったとは…!
配信は9月4日開始とのこと。お聞き逃しなきよう。

スタッフエンドロール(BGMがatwater roomでかなりテンションが上がった)終了後は、映像が巻き戻っている間にスタジオへと移動していたらしい大木社長からさらにお知らせが。
なんと、インストゥルメンタルツアー開催決定Slow Viewの前のMCは完全に伏線だった。コロナ流行以前から企画していたとのこと。
インストゥルメンタルだけのアルバムがあるため、ファンからはずっと待ち望まれていたこの企画。発表された瞬間のTwitterのタイムラインは嬉しい悲鳴が飛び交っていた。

東京公演は9月11日にLINE CUBE SHIBUYA(旧渋谷公会堂)にて開催。奇しくも自分の誕生日の翌日なので、きっと最高のプレゼントになること間違い無いだろう。
開催されるのはもちろん、体調を万全に整えて、必ず行けることを強く願いたい。

ただいつものライブを配信にしたのではなく、
私たちファンにどれだけ満足して喜んでもらえるかを一生懸命に考えて、映像演出や字幕などの効果の緻密な構成を練ってたのが全面的に伝わってきた。告知までも演出に盛り込んでいるのはずるすぎる。やることなすこと全てがスタイリッシュすぎる。
平時のライブに勝るとも劣らない、クオリティのものすごく高い公演だった。

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