ストレイテナーと旅した日々の話

  • URLをコピーしました!
目次

ずっと一緒に歩んでくれてありがとう

初めて買ったライブのDVDは、ストレイテナーの「NEXUS TOUR FINAL」だ。かなりの回数を再生したし、布教活動として人に貸したりしたので家にある映像作品の中でもダントツにケースがくたびれて擦り跡だらけになり、年季が入っている。

この作品の何がそんなに魅力的かというと、本編の日本武道館公演の様子がノーカットで収録されているのはもちろんのこと、ツアーのドキュメンタリーが映像がものすごく良いのだ。ナレーションは入っていなく、映像はどことなくモノクロームな色調。ツアー中のメンバーが過ごした時間がゆるやかな空気で、当時の新旧問わずテナーのメランコリックな情緒を特に感じる楽曲をBGMにして収められている。
移動の車中からぼんやりとした様子で過ぎ去る景色を眺める姿、開場前の少し暗いバックヤードでちょっと気怠げに一服する横顔、終演後の打ち上げで写真を撮って笑っている一幕、立ち寄った公演の噴水でふざけて遊ぶ一コマなど、飾らない日常のようで少しだけ特別な日々を過ごす彼らが、じんわりと愛しくなるようなドキュメンタリーなのである。

買った直後こそ”バンドって感じで格好いい!”とひたすら憧れる気持ちで観ていたが、今は自分の記憶ともリンクしている。

ライブに行くようになってから年間で最低でも20本(今年初めて下回りそう)、多い年は50本ほど参加してきた。10年で350本近くになるらしい。

一番多かったのが2011年〜2014年。何も考えずにチケットを取っていた。いくら若さ故の過ちとはいえ、あまりにも自制ができなさすぎて生活に支障が出るレベルだったため、2015年には仕事を変えることで無理矢理軌道修正するという強硬手段を取ることになる。

なぜそんなことになったのか、ずばり「ライブ遠征」の楽しさを知ってしまったからだ。恐ろしくてきちんと数えたことはないが、一番遠征したのはストレイテナーでほぼ間違いないだろう。この期間だけでもリリースツアーが3回開催されている。

好きで、ただただ彼らの姿が見たくて、もっとテナーの鳴らす音楽が聴きたくて、追いかけずにはいられなかった。何度同じ曲を聴いても毎回嬉しくて仕方がなかった。
彼らと一緒に私も旅をしていたのだ。

一つのツアーで何公演も行くことも少なくはなく、荷物をパンパンに詰めたリュックを背負って夜行バス格安航空での連絡手段をいくつも調べた。初めは新幹線に乗るのに乗車券と特急券が必要なことも知らなかった私が、いつのまにか一人でどこにでも行けるようになった。
彼らと共に多くの景色を見て回った。移動の道中もずっと曲を聴いていた。

とにかくライブが観たいという一心だったため、まともに観光に時間を割く事もできず、食事も贅沢できず(これに関しては比較的興味が薄かったのもあるが)、文字通り本当に行って帰ってくるだけになった事もある。仕事の調整がどうしても付けられず、夜行バスで出かけて夜行バスで帰り、ロクに休めないまま仕事に向かうという事もあった。
今やれと言われてももうできる気がしないし、あまりやりたいとも思えない。あまり。

そんなハードでタイトな行程の中でも、見た事や触れたことの無かったたくさんの物や景色に出会い、多くの人と出会った。その場限りで一言ふた言交わして終わった人もいれば、縁あって今に至るまで付き合いの続いている人もいる。

毎日が楽しくて仕方なかったし、幸せだった。

その日々をいつの間にか先述したNEXUS TOUR FINALのドキュメンタリーと重ねるようになった。秋から冬にかけてもよく思い出す。

あの日々がなければ今の私は確実にいないので後悔はしていないが、遊びに本気を出しすぎていたせいで大人として苦労していることは少なからずあるので、反省していることは多々ある。
当時の自分に進言ができるのなら、ほんの少しでいいから現実を見て頭使って考えろよ、とグーで思い切り殴り飛ばして膝詰めで泣きながら説教したい。

あれから何年も経ち、仕事も変わり、音楽以外にも好きなことややりたい事も増えた。やりたくなくてもやらなければならない事から逃げられない事も多くなってきた。徐々に遠出する回数は減ったが、やっぱりたまに遠くに行きたくなって出かける事がある。
いまだに若者気分が抜けきっていないとは言え、体力が落ちて来ているのは否めない。けれどぽんぽん数を重ねられなくなった代わりに、一回一回を昔より大事にするようになった。余裕を持てるようになった。

旅先に着いたらできるだけイヤホンを外して、現地の人の言葉や口調を聞いてその土地で生きる人の暮らしに触れる。ご飯でも甘い物でも、ご当地グルメでもカフェでも良いからそこでしか出会えないものを食べる。
時間が許せば現地のローカル線に乗り、車窓から景色を眺める。じっくりと移動する事でいつもの暮らしから離れた場所にいることを確かめる。
気に入った場所に何度も再訪するのも良いけれど、行ったことのない場所を開拓するのも楽しい。

そういう旅のあり方も、今まで出会ってきた全てのものが教えてくれた。

今はまだ遠くには出かけられないし出る気もないけれど、
落ち着いたらどこかに行きたい。
行きたいところはたくさんある。
行ったことのないところだと広島、鳥取、愛媛、熊本。
奈良、京都、長崎、宮城、北海道には再訪したい。

  • URLをコピーしました!
目次