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【ディスクレビュー】米津玄師「BOOTLEG」

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儚い煌めき

CDショップに数年勤めると、勤務時間の中でもう一生ぶん聴いて気が狂うんじゃないかと思うくらいストアプレイ(店内BGM)で聞く楽曲やアルバムがいくつもあるのだけれど、米津玄師の「BOOTLEG」もそのうちの一つだったりする。
それなのにまた聴きたくなるのだから不思議なものだ。多少の刷り込みがあるだろうとはいえ、それだけ魅力ある1枚であり、「名盤」なのだと思う。本作はタイアップ曲多数、DAOKOへ楽曲提供した「打上花火」のセルフカバー、「灰色と青」での菅田将暉とのコラボなど話題性にも富んでいる。

収録楽曲の中から個人的に好きな曲を挙げるとすれば、ストアプレイで頻繁にセレクトしていたこともあり「ピースサイン」「Moonlight」「春雷」「砂の惑星」あたりが好きだ。「灰色と青」も。

けれど1曲に絞るとしたら、「orion」を推したい。

自分がずっと好きでかなり影響を受けた「3月のライオン」のアニメのエンディングテーマに起用されていた。夜や冬に合いそうな、物憂げで寒そうだったり少しだけ暗そうな印象を受ける。静かでほのかに温度の低そうな空気の中をしんしんと歩んでいくような世界観の中に、”オリオン”と星の名前を冠している通り、ちいさな光がポツポツと点滅して瞬いている気配を感じる楽曲の空気に引き寄せられる。それがまた、「3月のライオン」の物語に、そして主人公の背景に絶妙に合っている。

サブスクでシングルも配信対象になっているのでぜひチェックしてみて欲しい。というのも、カップリングの「翡翠の狼」が名曲なのだ。楽曲の進行や音作りがポップで可愛らしく、ついリズムをとってしまう。北欧あたりの民族衣装を着た女の子たちがダンスをしているような映像が合いそうだ。ロケーションで言うと緑の若い芝が映えるカラッとした青空というよりは、雲が残る湿度を含んだ山頂付近のイメージがある。ポケモンで言うとブラック/ホワイトで登場するセッカシティのBGMのノリの良さに近いものを感じる。(細かすぎて伝わらない)「ララバイさよなら」もわずかに気怠げな感じがカッコいい。

シングルのカップリング曲だと言わずと知れた天下の爆売れ曲「Lemon」と共に収録されている「Paper Flower」の、月が雲に隠れて不安定に揺らめくような、おぼろげな空気感も好きだ。「クランベリーとパンケーキ」のタイトルの可愛らしさに反して若干ローな曲調も魅力的である。

話がどんどん逸れていってしまった気がするが、CDを大事に大事に扱って聴き込むのはもちろん楽しいのだけれど、サブスクが普及したおかげでこうしてオススメした時に「ふーんそうなんだ」で終わらず「じゃあ聴いてみるか」になる可能性が上がり、知人友人を含めさまざまな人達といい音楽が気軽に楽しめる機会が増えるかもしれないことを思うと、音楽の話をするのがより楽しい。

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