ELLEGARDENが帰ってきた夏 -part1-

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帰還の報せが届いた日 -2018.05.10-

その知らせを受けた時、私はCDショップでの仕事中でレジ打ちをしていた。
たまたまバックルームに入ったタイミングでLINEを開いたら「エルレ復活来たか」というメッセージが届いていた。

は?

文字にすると間抜けにもほどがあるけれど、これ以上に正直な反応はないと思う。
メッセージを送ってきた相手から、それまでにELLEGARDENの話を聞いた覚えもたいしてなかったので「コイツ何言ってんの」と全く信用していなかったのも大きい。が、10秒後にTwitterを開いてすぐ、

「ちょっと待って」
「夢みたい」
「えっ」
「やばい」

と、興奮して言葉が言葉にならない呟きで溢れかえり、異常な速さで流れていくタイムラインでセカンドインパクトを受けることになる。

取り急ぎ、自分の周りで一番この時を待ち望んでいた友人に連絡をした。
当然その後の仕事は退勤するまで手につかなかった。

ちなみに最初に連絡を送ってきた相手とは、その後私が典型的な厄介ファン全開の発言をしたことにより非常に見苦しい喧嘩になった。活休前から待っていた周りの友人からすれば私もミーハーもいいところなのでみっともないの極みだった

閑話休題。

帰宅して改めて、その報せを確認した。

活動休止のお知らせだけしか掲載されていなかったはずのELLEGARDENの公式サイトがリニューアルされていた。
アーティスト写真を撮影したのは、我らがロックフォトグラファー・橋本塁。妄想でしかあいまみえることのなかった、「今」の4人が並んでいる。
「THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018」と銘打ったツアーの開催。対バンあり。復活の日となる8月8日公演は、約束の地、新木場STUDIO COAST

少年たちが、町に帰ってくる。
ELLEGARDENが、10年ぶりに帰ってくる。

the HIATUSの伝説的な一生忘れられないライブを経て、ELLEGARDENの「いつかの日」にも少し近づいたのかなとほんのり思っていた。
Hi-STANDARDの16年ぶりのシングル発売の時に、喜びに溢れる人たちの顔を眺めて、私にとってのこういうバンドはELLEGARDENなのかなと思っていた。

その時が、来たんだ。

逸る気持ちを抑えきれず、TwitterやInstagramで、どこかの居酒屋で、どこかの家のそれぞれの部屋で、多くの人がそうしていたように、飲み慣れないアサヒスーパードライを開けて特別な夜にひとり祝杯をあげた。
ビールの苦味を感じながら、マジックペンを手にとった。染み付いた職業病から、手を動かさずにはいられなかった。

おかえりなさい、ELLEGARDEN。

余白の3ヶ月間-2018.05.11-2018.07.31-

ニュースの翌日には、職場で特設コーナーを作り始めた。
あんなに嬉々としてコーナー作りをしたのも、随分久しぶりだった気がする。
私がELLEGARDENをきちんと知ったのは活動休止後だったので当然グッズなどは持っていなかったのだが、
店頭で掲示したいことを話したところ友人からTシャツとタオルを貸してもらった。
貸してくれた友人には感謝しかない。

大きな店ではなかった。どれだけやったとしても、もっと自由の利く、大きい店舗には、敵わないと知っていた。
それでも、気持ちで劣りたくなかった。

またこの年の3月あたりから仕事終わりにランニングを週2、3回ほどしていたのだけれど、「エルレのライブに当たったのに体力なくて楽しみきれなかったら嫌だ」という思いで、格段に気合が入るようになった。
チケットすらない段階でよくやっていたなと思う。

スピリチュアルな話をするわけではないけれど、私はこういう風に言葉を綴ることを好んできたからか「言葉の力」というものを結構信じている。昔読んだ「xxxHolic」という漫画の中に、言葉の力を如実に感じさせるようなエピソードが出てきたのが印象深かったのが影響として大きい。

だから、周りが行きたがる人の多さと会場のキャパシティを憂いて「チケット取れるわけない」「行けるわけない」と口々にぼやく中で、絶対に言わないように、極力思わないようにしていた。「行けるわけないって言ってたら本当に当たらなくなる」「行きたいとかじゃなくて行くんだよ」と言っていた。

それでもいざチケットの申し込みが始まってからは、ぐらぐらに揺れる気持ちを保つのにかなり苦労した。

私は1次先行、2次先行も共に落選。
応募した時は近所の神社にお参りに行ったり、やたら一日一善を心がけたり、都合の良い時だけ現れる神様にすがったりした。2次先行の時はメンバーにゆかりのある場所に行って、験担ぎをしたりもしていた。これまでにも絶対に行きたいライブでチケットの倍率が高いライブは何度かあったが、ELLEGARDENの比ではなかった。ここまではした事がなかった。

復活直後に「ZOZOマリンスタジアムでは狭すぎるからサハラ砂漠とかでやるべき」と呟いている人を見かけた気がするが、割とありだと思っていた。

ずっと彼らのことを待っていた人にチケット当たった、という知らせを聴いた時は、自分のことのように嬉しかった。そこには嫉妬も何もなく純粋におめでとうを言う事ができた。あまりの倍率に当たったことすら素直に喜べていない人もいたけれど、本当に、本当に、楽しんできて欲しい、あなたが当たって私も嬉しいと伝えた。

逆に、なんとなく応募した、みたいな人が当たったと語っているのに対しては内心嫉妬で狂っていた。なんの権利があって言えたんだよと思うが。
この人よりあの人の方が絶対行きたくて身を削る思いで10年間待ち続けて生きているのに、なんてことを勝手に考えていた。そしてその人たちの足元にも及ばないけれど、私だって観たいのに、と、当時は口にしなかっただけで、腹の中でずっとその思いを飼っていた。

職場の後輩が1次先行でチケットを当てたと聞いた時も、「よかったじゃん」と声をかけたところ「でもZOZOマリンのスタンドですし」と返ってきて脳が冷えた。一呼吸おいて考える間もなく、「いやZOZOとかスタンドだしとかじゃないでしょ」と、自分でもゾッとするような低いトーンで言葉が口を衝いて出た。明らかにやべえ、と引かれたのがわかった。私の細美武士関連バンド好きは周知されていたので、恐らくまあまあビビらせたのだと思う。反省はしている。

Twitterでは転売屋や詐欺師とのイタチごっこや「同行者を募るので思いの丈を送ってください」と言ったやりとりが横行していた。血で血を洗うような、壮絶で醜い欲塗れの泥試合が日々繰り広げられていた。
チケットにまつわる闇や悲喜こもごもはこの期間でたいがい見尽くした気がする。

そして先行販売は終わり、残されたのは一般発売とリセール販売になった。
一般発売は当初は先着だった(曖昧だが)が、途中で抽選販売へと変更になった。

もうイープラスの申込履歴も照会できなくなってしまっているので記憶があやふやだが、私は1次先行は新木場のみ、第2希望なしで応募した。2次先行は新木場かZOZO、どちらかで申し込んでいたか…。迷いに迷って一度申し込みを終えてから、受付期間が終わる前に変えた気がする。

最後のチャンスの一般発売で申し込んだのは、新木場STUDIO COAST。
活動休止前のラスト公演が開催された、大好きなライブハウス、新木場STUDIO COAST。
その日の続きを、その場所で迎えられるなら、どれだけ素晴らしいことなのだろう。
ここまできたらなりふりなど構っていられず、とにかく当たりますようにと言う思いを込めて、1枚で申し込んだ。

そしてその後には本当の最後の最後のチャンスのリセール販売があったのだが、私はなんと受付期間を見落としていた。受付期間が終わったあとで申し込み損ねたことを知り、後がない状況で私は一般発売の当落発表の8月1日を迎えることになる。

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